頑張らない歯科医師が年商1億を達成する方法

”年商1億”というと勤務医や開業を控えているDrは「凄い」と感じるかもしれないが、メンテナンスが主流になった歯科業界では比較的容易に到達できる数字だ。

そして今回のテーマである“頑張らないで年商1億を目指す方法”の結論は

やはり「メンテナンス主体の歯科医院」である。

2024年の保険改定では口腔機能管理に保険点数がついたが、これは国が”口腔機能”という分野も認めたという事になる。

小児期から老人まで【口腔機能発達不全症→P重防→SPT→口腔機能低下症】という流れができたおかげで、Dr1人で年商1億以上の歯科医院は今後も増加するだろう。

メンテナンスや口腔機能管理はストック型のビジネスであり、インプラントや矯正などと違い長期的に安定した収益が最小限のストレスで手に入る。

・ストック型ビジネス(農耕型ビジネス):ex)メンテナンス、口腔機能管理、小児矯正

  爆発的な収益はないが毎月の収支が安定する。

  新患数に依存しない

・フロー型ビジネス(狩猟型ビジネス):ex)インプラント、成人矯正、自費補綴

  収支は安定しないが爆発的な利益を生む

  新患数に依存する

つまりストック型ビジネスは初診患者の脱落を最小限にしメンテナンスや口腔機能管理につなげる事で、売り上げをあげるという農耕型の仕組みだ。

昔の歯科医院ではDrが治療するしか売り上げをあげる事ができなかったため、年商1億を目指す場合にはDrを複数人雇用するしかなかった。(その時代は今よりは勤務医雇用は難しくなかったが)

しかしストック型のビジネスであるメンテ主体の歯科医院は、衛生士を獲得しさえるれば年商1億の医院が完成する。その歯科衛生士を獲得するのが難しいんだよという声が聞こえてくるが。。

今回はストック型ビジネスを目指すことで無理やりやりたくもないモチベーションアップをせずに、年商1億を達成する方法を説明しよう

年商1億なら経営コンサルややる気アップ系セミナーは全く必要ない

目次

お金と幸福度

まず初めにお金と幸福度の関係についてだが、これはとてもよく議論される。

以前は年収700万以上(現在のレートでは1000万)は幸福度はあがらないと言われていたが、            最新の研究結果では、人を幸福度の高いグループと幸福度の低いグループに分け、このうち幸福度の高いグループのみ年収1000万以上でも幸福度は伸び続けるという。

この結果からの私の考えは【自分が疲弊しない範囲で最大限年収UPを試みる事】だと感じた。

そして、幸福度に関しては”年齢”との関係がある。それをミッドライフクライシスと呼ぶ。

ミッドライフクライシス

ミッドライフ・クライシスとは、直訳では中年の危機で、中年期に感じる悩みや葛藤、不安などを抱く心理状態を意味します。

中年期は、40歳から64歳の25年間を言い、身体的、社会的、家庭的、心理的に変化の多い時期です。

また、安定と不安定、獲得と喪失が共存する時期であり、今まで積み重ねてきたものを問い直し、時には人生の危機に直面する時期でもあります。

統計によれば48歳の幸福度が最低で、48歳をすぎると徐々に幸福度はあがる。

これは人種に限らずすべての人間にあてはまるという。

48歳の幸福度が最低なのは仕事のプレッシャーや子育て、親の介護などが重なるためであり、58歳から幸福度があがるのは子育てや介護が落ち着き、仕事では自分の能力の限界を受け入れる事ができるためだという。

つまり開業医の目標はもっとも負担がくる40代までにメンテ主体の歯科医院で年商1億をつくり、自分の売上に頼らない歯科医院をつくる事が重要だ。

そしてそれ以上の売り上げや承認欲求を目指すのでなく、その状態を受け入れる事でミッドライフクライシスの時期に備え、人生の幸福度を極力さげないようにした方がいい。

年商1億という数字の意味?

「年商1億を目指そう」

「年商1億の院長が教える勝ち組経営」

などというセミナーが数多くみられるが、”年商1億”とはどのような経営状態なのだろうか。

歯科医院の環境で経営は左右するので、前置きとして私がもっとも理想的(ストレスが少ない)と考える規模でお伝えしよう。

場所:田舎(人口5~10万人)

年商:1億

診療:保険、メンテナンス

診療日:週休2日制(振替診療なし)、年間休日125日

チェアー:5~6台

患者数:30~40人

スタッフ構成:院長1人、矯正医1人、DH4人、DA2人

売り上げ1億、変動費1000万、粗利9000万、固定費8000万(院長給料3000万、スタッフ給料3000万、その他3000万)

売り上げ1億のうち保険9000万で自費が1000万となる。自費率はメンテが多くなると自然に下がるがメンテ主体の経営ができている証拠だ。

粗利率90%と比較的高い数字になる。これもメンテ主体の歯科医院の特徴で技工料がかからないため多くの利益が残る。

あとは借り入れや家賃を払っていく事になるが、メンテ主体の歯科医院をつくり変動費をおさえれば、“歯科医師求人”という難関をクリアしなくても年収2000万程度は見込まれる。

年商1億ならやらなくていいこと

 最近は歯科業界がレッドオーシャンなどと金儲けの業者にあおられており、不安な院長は色々な事に手を出しすぎている。その結果院長は自分の時間がなくなりどんどん疲弊していくのだ。

実際には年商1億程度なら全く必要のない業務がたくさん存在する。

今回列挙する”やらなくていい事”はあくまで院長が焦ってやる必要のない事である。

スタッフが自分の時間を使い日々の仕事を楽しみながらやる事は大歓迎だし、女性はそういう事に時間をかけるのが好きな場合も多い。ここは男性と違い効率だけの思考回路ではないのだ。

スタッフから意見がでた時は院長としてしっかり応援してあげよう。

さっそく年商1億の医院になるために必要のない事を考えていこう。

 毎朝の医院理念の復唱

  全く意味がない。朝そんな事をする歯科医院は多くのスタッフに倦厭される。人手不足のこの時代に院長が間口を狭くしている。

最近は開業セミナーで時間をかけて医院理念やクレドなどというものを作るという事が流行っている。

しかし間違えてはいけないのは、医院理念は立場や状況で変化するという事だ。

開業時に「医院に関わる全ての人を幸せにする」という理念を掲げる院長も多いが、それは表向きの理念で実際は「借金を早く返したい」「高級車や高級時計を買いたい」などが本心だろう。

もちろんそれは正常であり避難されるべき事ではない。そもそも自分が幸せでないのにスタッフや患者を幸せにできるなどと考える事がおこがましい。

ある程度歯医者が流行り借金を返せる見込みができ、一通り贅沢をし終え物理的な贅沢になんの意味もないと分かってから「医院に関わる全ての人を幸せにする」という理念が本心から生まれるのだ。

それは私も例外ではない。

開業時に「医院に関わる全ての人を幸せにする」というような理念をかかげたが、それはスタッフや患者うけを狙ったものだった。当時の私の本心は「借金返済」「流行る歯科医院を作り承認欲求を満たす」というものだった。

そして5年ほどで年商2億というまあまあの歯科医院を作り借金返済や承認欲求という部分が満たされた今は「医院にかかわる人をできる範囲で幸せにする」という思考になる事ができた。

理念を必死で考えるという経験もいいが、開業時の理念は状況で変わるという事を覚えておこう。そして自分の“欲”がある程度満たされた時に本当の理念が生まれてくる。

なので開業時の理念は患者うけのいいものを5秒でつくろう。

 親子教室や〇〇クラブ

  スタッフがやりたいのなら院長として応援するべきだが、院長が率先して患者獲得のためにやるのは時間の無駄だ。患者獲得ならSEOを強化したほうがよっぽど効率的だ。

  スタッフが増えてきて様々な活動をしていくという意味では賛成だが、開業したての時はやらない方がいいだろう。労力に見合った結果が付いてこない。

 ウェルカムボード

  最近の流行りだがこれも親子教室と同じでスタッフがやりたいのなら院長として応援するべきだが、院長がやるのは時間の無駄だ。ウェルカムボードがあるからあの歯医者に行こうなどとは思わない

 居残り練習

  昭和時代の負の産物であり、今はすべて勤務時間内に時間を作るべきだ。居残り練習をして育てられたスタッフは、自分も居残り練習をして新人を育てなくてはならない。その結果居残り練習という謎の文化が歯科医院に根付いてしまい、院長も給料を払わなくていい事に胡坐をかく事になってしまう。

 キャンセル率や売り上げの発表

  わざわざ発表することに意味はないが、院長はしっかりと把握しておく。そしてキャンセルがあった時に電話する患者リストをつくり、アポを埋めるようにスタッフに指導する。

スタッフ面談

 年商1億の歯科医院のスタッフ数は10人前後である。その程度の人数ならわざわざ面談をする必要はない。10人なら何か問題があれば誰かが気がつくはずだし、それからの対応で全く問題ない。

“家族のように接する”という理想を掲げている先生もいるが、そんな事はスタッフも望んでいない場合が多い。本当に悩んでいる時は院長自身が話す事も大切だが、適切な距離感を保つ事が理想だ。

家族のように時間をかけて接する前に、給料をあげて他院に負けない福利厚生を整えよう。

インスタ

 女性はインスタが好きな場合が多いので、スタッフがやりたいのであればやらしてあげるべきだが、院長がスタッフに無理やりインスタを更新させたり、ダンスをするようにスタッフに強要する事はやめたほうがいい。

そもそも田舎のメンテ主体の歯科医院のインスタを見て来院する患者はほとんどいない(都会の自費は別)

マニュアル

  年商1億の医院ならあまり使う事がないだろう。マニュアルというよりは使用方法などを動画でとり、保存しておくだけで十分だ。

仮に多くの時間を割いてマニュアルを作ったとしてもいずれは使用しなくなる。その理由として働きやすいメンテ主体の歯科医院をつくると退職者がほとんどいなくなる。

これらは年商1億の医院にはあまり必要ない。衛生士の獲得ができ集患もできれば、自然と超えられる数字だからだ。しかしそれ以上の年商を目指すと必要になる事もある。

当院は親子教室やキャンセル率発表、スタッフ面談はおこなっている。スタッフが20人を超えてくると院長の目は全くいきとどかなくなり、その時には多くの事をスタッフに任せる必要がでてくるためだ。

年商1億医院になるためにやるべきこと

メンテナンス型の歯科医院を構築する事が”院長の人生”として最もコスパがいい。仕事にかける時間を最小限にすることで院長のストレスを減らし、プライベートの時間も確保できるからだ。

そしてメンテナンス型の歯科医院を構築する上でもっとも大切な事はもちろん“歯科衛生士の獲得”である。

スタッフ定着については以前のブログで書いたので、そちらを参考にしていただきたい。あの思考で日々を過ごしているとスタッフが知り合いの歯科衛生士を紹介してくれるようになる。

開業場所も大切である。

今後開業する先生や親の医院を継ぐ予定の先生は、人口5万人以下の地域は辞める事をおススメする。このような地域は今は何人も衛生士がいたとしても、この先何十年後には衛生士の獲得が必ず困難になる。

日本経済新聞から引用

上記地図で赤、紫などの地域はすでに人口が減少している。

さらにあと何年か後には南海トラフが必ず起こる。南海トラフが発生したら現時点で人口が5万人にも満たない地域はとほとんど人がいなくなるだろう。

親の医院が今どんなに流行っていても人口5万人に満たない地域の歯科医院を継ぐメリットはゼロだ。

開業歯科医院数の減少は今後さらに加速するので、求人を優先し人口10万人程度の都市で開業したほうがいいだろう。

さらに南海トラフが来たら人口5万人以下の地域はインフラ復旧は絶望的だ

能登半島と同じようにインフラ復旧されない地域がどんどん出てくるだろう

人口5万人以下の地域で開業、継承は絶対にしてはいけない

では年商1億の歯科医院に必要な事を考えていこう。

・求人の考え方

給料は周りの歯科医院平均より少し高ければいい。あまりにも高額すぎると逆効果になる。歯科衛生士などのスタッフが集まる事が大前提なので、スタッフの事を第一に考える思考で求人をだす。そしてどんな些細な事でもいいから求人票に書いた方がいいだろう。

当院が書いている事

予防接種費用全額医院負担

スタッフトイレ2個(男女別)

結婚祝い金

出産祝い金

成人祝い金(スタッフの子供が成人した場合も可)

食事会(全額医院負担)

・奨学金

 スタッフに奨学金をだし歯科衛生士になってもらう方法だ。奨学金目当てにきた求職者にすぐ金を出すことは難しいが、自分の医院のスタッフに話をして衛生士になってもらう方法はかなり有効である。

契約に関しては当然弁護士を通しておこなう。

・福利厚生

社保完備で残業がないのは今の時代当たり前である。

そこから+αできる事をやっていく。現在私が導入を検討しているのは、昼食を医院負担にする事や家事代行サービスの一部を医院負担にする事だ。

今後は歯科医師会に入っていても協会けんぽにする歯科医院や、週40時間以内の勤務時間でも給料が他院と変わらない歯科医院もでてくるはずだ。週の勤務時間を37時間などにする事も検討してもいいと思う。

福利厚生は完全にスタッフファーストの思考だ必要だ。少しでも医院が得をするという考えをしてはいけない。法律通りにするのは最低条件で、それ以上の事をやってあげるべきだ。

・ハード面

 地域の患者にメンテナンスを重要視している歯科医院であると認知する必要がある。そのために治療とメンテナンスは入り口からしっかりと分ける事をおススメする。

さらに院内壁紙の色や、音楽、匂い、絵画、花などを分けて誰がきても雰囲気が全く違う印象を与えるといいだろう。

このようにメンテナンス型の歯科医院には広さがいるので、家賃が高い都会には不向きなのだ。

・ソフト面

必ずカウンセリング時間をしっかりと設ける事だ。治療やメンテナンスと同時にカウンセリングをするとなるとしっかりできないので、アポにカウンセリング時間を入れ込む。

初診カウンセリングでは医院の方針をしっかりと説明し、メンテカウンセリングではいかにメンテが必要かを説明する。担当歯科衛生士や院長が名刺を渡すのもいいだろう。

・配布資料

初診患者やカウンセリング時には医院の資料を配布しよう。ここに関してはあえてアナログで紙を使っている。田舎は年配の患者が多い事と、紙が家にあれば他の家族の目にもふれる機会が多くなるためだ。

・メンテナンスアポイント

院長の考えや歯数などで左右されるが、倫理的な事を除けば成人は全て30分で小児は15分で回せば、1チェアー当たり月300万の売り上げは可能だ。しかしそこまでやりすぎると歯科衛生士のやりがいもなくなるし、バタバタした医院になり離職につながる。大切なのはスタッフが居心地の良い歯科医院だ。

当院は基本30分だが、人によっては60分かけたりしており、そこは歯科衛生士に任せている。

・保険点数

細かい説明は省くが、今の保険制度はとても素晴らしいと感じている。根治や義歯など点数が低いところもあるが、定期管理型歯科医院(口腔機能、SPT、P重防)においては非常に優遇されている。

自費も大切だが、歯科治療に興味のないDrは保険点数を勉強し、国の方針にあった歯科医院をつくれば年商1億は容易に到達できる。さらに保険を勉強すると国がどのような歯科医院を作らせようとしているかを推測できるようになる。

国が望む歯科医院を作れば自然と保険点数は上がるようになっている。

・矯正

矯正とメンテ主体の歯科医院はとても相性がいい。矯正をする小児は必ずメンテをするし、その家族もメンテに通う可能性が高いからだ。

矯正とメンテの関係を予測して私は研修終了後すぐに都内矯正専門医で勤務した。

できれば私のように勤務医時代に矯正(特に小児矯正)をできるようになると開業後に有利だ。そのためには矯正をある程度やっている田舎のメンテ主体の歯科医院に勤務するといいが、そこが矯正を教えてくれる環境かを見極めるといいだろう。

矯正医を雇う場合も院長がある程度矯正を理解していると、スムーズにいく場合が多い。

・高齢者を狙う

自費が入りにくい高齢者を嫌う先生もいるが、メンテナンスに高齢者は重要だ。もちろん歯周病を治療するという意味もあるが、高齢者は歯医者に来て馴染みの衛生士と会話する事が生活の一部になる。

当院の高齢の患者はスタッフと話をしたり、待合室で友人と話たりしている。

医院にスペースがある場合は地元のコミュニティースペースとして、開放などをしてもいいかもしれない。

・地元の行事に参加

田舎であればあるほど行事参加は集患に役立つ。私は地元の友人達と定期的にお祭りのような行事をやっているが、そこには毎回40人くらいの子供が来ておりそこからの矯正患者がとても多い。

広告に頼らない人と人との繋がりは、今の時代だからこそ重要視するべきなのかもしれない。

まとめ

今回は頑張らないで年商1億を目指す方法を紹介した。

自分もそうだったが、年商1億を目指す段階で院長は余計な事をやりすぎる傾向がある。実際は院長の自己満足でほとんど意味をなしていない事が多い。

経営コンサルの話を聞くのはいいが、自分にあった内容かどうかをしっかり判断しよう。余分な事を排除して、本当に大切な事に集中する事が必要だ。

そもそも現段階の保険制度で年商1億程度なら経営コンサルに入るのはお金の無駄だと思う。

私は経営コンサルは導入していないが、経営セミナーは定期的にうけているが、気になる先生はDMで聞いていただければ、お答えする。

次回は歯学部生卒業後のベストな進路について説明する。

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