スタッフが辞めない歯科医院とは?

人手不足が叫ばれているが、世の中にはスタッフが辞めにくい歯科医院も一定数存在する。

今回はそのようなスタッフが辞めない歯科医院について考察していこう。

まずスタッフが辞めない歯科医院は大きくわけて3つのパターンが存在する。

①給料が相場より高い

②働きやすい

③勉強(やりがい搾取も含む)ができている

このうちどれか一つがあれば十分スタッフが辞めない歯科医院になるが、逆にすべて当てはまる歯科医院はおそらく存在しないだろう。

給料が良く働きやすき勉強ができる歯科医院を求める歯科医師、歯科衛生士も多いかもしれないが、そのような歯科医院が存在しない理由としては、それを作る理由がないからだ。

つまり給料がよければ勉強環境を整えなくても求人はくるし、勉強ができる環境であれば働きやすさを求めないためである。

3つのスタッフが辞めない歯科医院を挙げたが、そもそもスタートラインにすら立てていない歯科医院も多く存在する。

それはどのような歯科医院か?

立地が悪い

院長が怒りっぽい

立地が悪い

これに関しては歯科医院経営において最も致命的である。

辞める辞めないの前にスタッフが来ない。

私が開業している東海地方でも田舎はかなり過疎化が進んでおり、いくら求人を出しても人がいない地域では歯科医師、歯科衛生士は全く来ない。

逆に立地の良い歯科医院には簡単に人が集まる。

立地の良い歯科医院の院長が”求人成功の秘訣”などのセミナーをやっている事も多く、過去にそういう類のセミナーを受けたがごくごく一般的な取り組みしかしていなかった。

マジで金と時間が無駄だったと感じた。

自分が努力したから求人がきていると勘違いし、立地が良いから求人が来ているという事を認める事ができていない。

日本は人口減少が加速するため、各県の県庁所在地や、衛生士学校から遠く離れている田舎での開業は控えたほうがいいだろう。

人口が5万人程度の市町村が多く存在する地域では、南海トラフが起こった後は能登半島のように、インフラ整備を国が放棄する可能性が高い。

いくら患者がいるからと言ってそのような地域で開業、承継するのはやめたほうがいい。

今後の人口動態を見極めて開業、継承を選択したほうがいい。

院長が怒りっぽい

これも立地ほどではないが、なかなか致命的な事柄である。

郊外型歯科医院では院長が怒りっぽくてスタッフが定着している歯科医院はほとんど聞かない。

イライラしていたり、怒ったりする事にメリットはない。

しかし、県中心部で開業しているなら求人は集まるので、院長がストレスをためたくないなら怒ってもいいだろう。

朝機嫌が悪い

カルテがたまるとイライラが出ている

キャンセルが出るとイライラしている

アシストができないとバキュームを取り上げる

モラハラ気質の発言が多い

色々な開業医と話す機会が多いが、イライラしている院長はかなり多いと感じる。

今イライラしている院長も勤務医の時には、イライラしている院長を見て自分はそうはならないと言っていたはずだが、結局イライラしてしまう人がとても多い。

最近はメンテで経営を安定させるという思考(大型化しやすい)や、デジタル化、開業費用の高騰でかなりの借金を背負う若手が多いが、まずは自分が借金をどこまで許容できるかを考え開業するといいだろう。

「勤務医時代にスタッフと仲良くできているから、開業後もスタッフには困らない」という甘い考えの歯科医師もいるが、勤務医時代にスタッフから嫌われないはスタートラインで、そこで嫌われている歯科医師は何かが欠けているはずだ。

勤務医時代にスタッフの機嫌取りをする必要は全くないし、いくら勤務医でもスタッフが問題行動をしたら注意した方がいいが、どこの医院でも嫌われるという歯科医師は開業しない方がいいだろ。

間違いなく失敗する。

そもそもイライラする原因は”金”に起因している場合が多いと考えられる。

”金”が絡む事で人は冷静でいられなくなるのだ。

そのため、私は投資を勧めている。

歯科医院以外で資産を拡大する事ができれば、イライラする事はかなり減る。

患者からクレームがきた→患者が減るかもしれない→まあ投資で儲かるからいいか

今月は売り上げが少ない→来月も下がったらどうしよう→まあ投資で儲かるからいいか

スタッフが辞める→売り上げが下がるかも→まあ投資で儲かるからいいか

このような思考になる事が可能になる。

この「まあいいや」という思考は経営にはプラスに働く事も多い。

経営していると誰もが漠然とした不安を持っているはずだが、その不安が大きくなればなるほど、判断を鈍らせる事は良くある。

私は人生においてメンタルを安定させる方法は色々な”柱”をもつことだと考えている。

仕事、家族、学生時代の友人、趣味の友人など多くの柱を持つことでメンタルは安定しやすい。

それは資産形成でも同じで、”歯科医院経営”と”投資”という柱を持っていれば、メンタルが安定しその場の感情にながされ判断を間違える事が少なくなる。

私は、毎日お金に追われて仕事をする事に意味を見出す事はできない

目次

スタッフが定着する歯科医院の種類

ではそれぞれがどのような医院ををお伝えしていく。

①給料が相場よりかなり高い

この場合は相場よりも「かなり」高いという事が重要だ

・新卒給料

東海地方は新卒歯科衛生士24万~26万が相場だが、30万近くを出す。

歯科医師は新卒45万くらいが相場だが、60万近くをだす。

・既卒給料

既卒はあまり基準はないが、歯科医師なら年収1000万以上、歯科衛生士なら年収500万以上だす歯科医院。

これらは大型歯科医院やもしくは都会で開業しており、自費を短時間で回して利益を上げている歯科医院が可能になる。

給料が相場よりも高い歯科医院は多少嫌な事があっても辞めないし、お金目的のスタッフが集まりやすい。

直接の知り合いではないのだが、成人メンテ30分小児メンテ15分で回している歯科医院があるが、そこは給料がかなり高いので衛生士が10人以上在籍している。

メンテ15分はかなり忙しいが、給料が高いため辞めないという。

仮に辞めた場合でも求人はすぐに来るらしい。

②働きやすい

私は働きやすさとは大きく分けて2種類あると考えている。

院長のキャラクターが良い

福利厚生が整っている

・院長キャラクターが良い

働きやすい職場には院長が優しいという共通点があり、短期な院長の元で長期勤務するスタッフはいない。

多くの歯科医師は自分が院長という事に固執し、

「院長=すべてをきめる」

「院長=管理しないといけない」

という認識になっている。

何もかもを院長が決めるから自分が指示した事と結果が違うとイライラしてしまうのだ。

さらに歯科医院は年下の女性スタッフが多い事もあり、スタッフに舐められたくないと考えてしまう院長も多いようだ。

自分の指示した事と結果が一致する事はないと理解し、スタッフに任せるという思考が必要だ。

私のキャラクターを説明するのは難しいが

細かい事は気にならない(というか気づかない)

怒らない(投資があるのでまぁいいか精神)

やはり男性脳で考える正解と女性脳で考える正解は大きく異なるので、女性スタッフが決定したほうがいい部分も多い。

名古屋の先輩の歯科医院は給料は平均だが衛生士が長期勤務しており、それは居心地がいいからだ。給料はふつうだが居心地がいいから辞めない。

それもやはり院長のキャラクターが良いという部分が大きいだろう。

・福利厚生が整っている

福利厚生が手厚い歯科医院は幅広い世代のスタッフが定着する。そして結婚や出産で多少遠くに引っ越しをしても勤務し続けてくれる。

参考までに当院の福利厚生としては

・社保完備(歯科医師国保、雇用保険、労災保険、厚生年金)

・週30時間以内勤務で保険加入(歯科医師)

・有給消化100%(有給申請日は不公平の是正のためクジの場合もあり)

・当日の有給申請OK

・有給申請は事務へ

・有給の計画付与なし

・休みの連絡を院長にしなくていい

・産休育休あり

・介護休暇あり

・企業型確定拠出年金あり

・院長による投資アドバイス

・交通費全額支給(歯科医師は新幹線通勤も可)

・住宅手当

・予防接種費用全額負担

・健康診断全額補助

・出産お祝い金

・結婚お祝い金

・成人祝い金

・スタッフの子供の成人祝い金

・車、バイク通勤可(駐車場無料)

・セミナー費用全額負担(JIADS、矯正LASコース)

・自己啓発系セミナーへの参加なし

・社宅あり

・退職金あり(3年以上勤務)

・食事会(全額医院負担)

・スタバ月1回支給

・スタッフ用ウォーターサーバーあり

・院内アロマあり

・スタッフルームあり(25畳)

・スタッフトイレ2つ(女性用、男女用)

・ベビーシッター費用補助

・年間休日127日

・振替診療なし

・平日18時退社、土17時退社(DA、DHは早番遅番あり)

・残業月3時間以内

・保育士による院内託児あり

・自己啓発系セミナーなし

・ミーティングは全て勤務時間内

・勤務時間内でスポーツ大会(年1回)

・居残り練習なし

・副業OK(院内規定あり)

・歯科衛生士奨学金制度あり

・退職時に次の職場に就職しやすいように推薦状あり

このくらいやれば田舎でも歯科衛生士は困らない。

当院は5年ほど歯科衛生士求人活動を行っていない。それでも紹介で毎年1~2人新卒歯科衛生士が入社しており、現在は14人の歯科衛生士が在籍している。

2025年現在は歯科衛生士は募集していませんので、募集再開する時期が来ましたらXやインスタで告知いたします。

③勉強(やりがい搾取)ができている

これは学術的に有名な先生や歯科で働く事がどんなに素晴らしいかを伝える事ができる先生の歯科医院だ。

何十年も臨床を勉強し続けている先生も世の中には僅かだが存在する。

全くなりたくはないが、そのような先生はマジで凄いと思う。私など卒後10年で臨床に飽きた。

学会やセミナーで有名な先生の歯科医院は、症例を集めるために学術的な治療をしている場合がある。そのような歯科医院では日々最新の治療を取り入れており、勤務すれば学ぶ機会が増えるため歯科医療を学ぶ事が好きな歯科医師や歯科衛生士は辞めない。

注意が必要なのは、勤務医は教えてもらいたいという欲求が強いが、しっかり勉強をする職人気質の院長は人に任せる事が苦手な場合があり、逆に任せる院長の歯科医院では色々な事が自由にできるが、勤務医は教えてもらえないという認識になってしまう。

そのため院長と勤務医の間で「勉強できる」という認識の乖離が生じる場合がよくある。

「勉強ができる」歯科医院はある程度の規模の歯科医院と分院展開していない歯科医院が当てはまる事が多い。

ある程度の規模の歯科医院でないと教育に時間やお金を割く事はできないし、分院展開をしていると借入や人件費などのコストが多額になるため、スタッフにはノルマを設ける必要がでてくる。

分院展開をしていて歯科医師や歯科衛生士の給料がいい歯科医院はまず間違いなくノルマがあると思っていいだろう。

勉強ができる歯科医院を作るのは最も難しい。

まず大前提に「院長が歯科大好き」が前提としてある。

仕事とプライベートの境なく歯科について常に考え勉強しているような先生しかたどりつく事はできない。

「勉強ができる歯科医院」は歯科医師と歯科衛生士では定着が異なる。

一般的には若手で勉強したい歯科医師(勉強すると将来良い結果が得られるとなぜか信じている歯科医師も含む)には強烈にマッチする。

このような歯科医院では患者さんに素晴らしい医療を提供する事や、スタッフがその医院に所属している事が素晴らしいとされており、福利厚生はよくない(良くなくてもスタッフが集まるので良くする意味がない)

院長からするとこのような医院を作る事ができたら、とても強いしかなりお金が手元に残るだろう。

一方でこのような歯科医院は歯科衛生士の求人が集まりにくくなっているようだ。

学会でかなり有名な先生を知っているがいくら宣伝をしても衛生士が集まらないらしい。

その医院は院長が色々とセミナーを開く必要があるため、その資料作りのために患者から多くの資料をとる。そして発表資料をまとめるために、ほぼスタッフが毎日サービス残業していると聞いた事もある。

それに使命感を持っている歯科衛生士はいいのだが、最近はそのような歯科医院は敬遠される傾向にある。

歯科業界はかなり狭いので、一度ブラックという噂が広まるとなかなか衛生士求人が来ない可能性が高い。

まとめ

今回はスタッフが辞めない歯科医院についてお伝えした。

この①~③のうち1つでも当てはまればスタッフが辞めにくい歯科医院になるだろう。

今後開業を予定している若手歯科医師はこのような歯科医院をつくればスタッフ定着がよくなるし、就職活動をしている歯科衛生士も自分に合った歯科医院選びの参考にされるといいだろう。

しかしこれらも最低限の”立地”という土台の上に成り立っている。

私は東海地方で開業しており、名古屋駅付近で開業している院長の話をきくと衛生士はすぐ求人が集まるらしい。

立地がよければこれらの事がなくても歯科医師、衛生士は集まる(辞める辞めないは別だが)が、郊外型で開業する場合はこれらのうちどれから一つ以上を持っていないと、スタッフ不足で苦労するだろう。

立地を考慮したうえで自分に合った医院作りや、自分に合った就職先を選ぶといいだろう。

正解は一つではない。

次回は「メンテナンス患者の増やし方」をお伝えする。

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