スタッフが定着する歯科医院院長の思考法

開業医において”スタッフ定着”は医院のカギだ。

今回はスタッフが定着しやすい行動や思考について説明していこうと思う。

ただ誤解のないようにしていただきたい。

ブログで何度も伝えているように開業の最大の目的は「院長のストレスを最小にすること」である。

今回の思考に関しては全員ができるものではないし、院長や開業環境で考え方も変わる。

前回のブログで説明した都会で開業している場合、求人はめちゃくちゃくる。

そんな先生はスタッフに怒鳴り何人辞めようが、院長が怒鳴る事でストレスが軽減すればそっちがいいに決まっている。

私たちには歯科医師という資格があり、日本ならどこでもすぐに就職できる。

開業後にスタッフがいなくなってしまっても、どこかに就職してもいいし、妻と2人で開業してもいい。

借金が多い場合は仕方がないが、医院を維持する事が目的となりストレスをかかえる人生ほど虚しいもことはない

目次

当院の定着状況

まずは当院の状況を説明しよう

当院はスタッフ定着がかなりいいと自負している。

Drは開業で抜けたり同期が数か月働いたりしているため出入りがあるが、他のスタッフが辞める事はほとんどない。

継承直後:DA2名入社 DH2名、DA2名退職

リニューアル後:DH9名入社 DA10名入社     DH1名退職 DA2名退職

継承直後は4人退職はしかたのない部分がある。そもそも息子が帰ってくることに嫌悪感を抱く人間もいる。

しかしリニューアルして6年経過しているが退職はわずか3名だ。

そのうち退職時に私やスタッフと揉めたのは1名で。他のスタッフは全員円満退社である。

離職率は7%でクリニック平均の15%を大きく下回っている。

優しい院長?怖い院長?

これは断言できるが100%優しく口うるさくない院長がいい。

求人がめちゃくちゃくる場所で開業している医院なら、ストレスを溜めないために怒ってもいいだろう。

しかしほとんどの医院はそうはいかない。

細かい事はあまり言わず色々と任せる院長の方がスタッフ定着はよくなる。

知り合いの院長と話すと「優しいとスタッフから舐められる」というが、舐められる事はそんなに悪い事なのか?と私は疑問に思う。

そのような先生は自分に自信がないように感じる。

“自信”とは「まわりよりの自分が凄い」と考える事ではなく「良い部分と悪い部分を含めて自分を認める」ということだ。

自信があれば人から何と言われようが関係ないし、たとえ舐められようが長期勤務してくれる方が有難いではないか?

優しく頼りなく見える院長はスタッフがサポートしてくれる場合が多い。私は管理が得意ではないが、管理が得意がスタッフが周りにいてくれる。

院長はイライラしない環境をつくる

院長の仕事で治療よりも大切だと考えている事は

「自分がイライラしない環境をつくる」事である。

院長の1日の機嫌をスタッフはよく見ている。そこは男性脳とは違う部分だと感じる。

院長がイライラしているとその態度はスタッフに伝わってしまう。

私が実践している環境づくり

・治療のアポにゆとりを持たせる(Maxの6割くらい)

・院内の改善点はまずスタッフで話し合いをしてもらう

・メンテ主体の医院をつくり、売り上げの70%がメンテという状況を目指す

・自費率を無理やり高くしない(当院は自費率10%)

・状況ごとに誰に何を報告するかを常にスタッフに伝える

これによりストレスは大幅にへり、最近ではほとんどイライラしなくなった。

なによりメンテで収益が安定するとストレスはかなり減る。(当院メンテ売り上げは1300万/月)

Drが1~2人で自費率が高い医院はとてもストレスが多いだろう(治療が好きな人は別だが)。院長や代診に何かあれば売り上げが大幅ダウンしてしまう。

治療する事が好きで仕方がないDr以外は、自費率の高さよりメンテでの収益を目指した方がいい。

福利厚生

福利厚生に関しては”全力で”というのが私の持論だ。

ここに関しては完全にスタッフファーストであるべきだと考えている。

小手先で医院が少しでも得をしようなどと考えてはいけない。

法律どおりに福利厚生を整えることは最低条件として、少しでもスタッフに得があるように考える事が大切。

ワクチン接種(勤務時間内に接種してもらってもいい)や健康診断は当然全額医院負担にするべきだし、残業代もしっかり計算する必要がある。

院内勉強会は必ず勤務時間内におこなう。

有給の取り方や交通費などで少しでも医院が得をするように考えている院長もいるが、そんな事はしてはいけない。

いくら口でいい事を言っていてもそのような行動でスタッフに伝わってしまう。

最近は“協会けんぽ”に加入する医院も増えてきた。当院は年間負担額が300万増加してしまうため加入していないが、今後は協会けんぽ加入はマストになるかもしれない。

有給 

全てのスタッフが有給・産休・育休がとれるべき(もちろん非常勤Drも)だし、出勤日数や出勤時間は子育てに影響するので、スタッフ自身が決めるべきと考えている。

ついこの前当院非常勤Drに「有給はつかってね」と伝えたらとても喜んでいた。

まだ有給を使う事に戸惑っているDrがいる。院長が一言伝えよう

さらに当院は“当日有給”もありにしている。有給は全て使いきるべきだし、急に体調が悪くなる事もあるし、

子どもが熱を出しているのに出勤しているDrもいるが、そんな時は仕事なんか休めばいい。患者には「Drの子供が熱を出したので今日はキャンセルです」そう伝えてもいいと思う。

子どもにとって母親は仕事よりも大切な存在だと思う。

給料

あまりにも高い給料は逆に悪目立ちするため地域の平均より少し高めに設定する。

歯科衛生士学校の先生と話をする機会があったが、給料が高すぎたり低すぎたりする歯科医院は学生におススメしないと言っていた。

歯科医師に関しては別だ。時給は高いほうがいい。当院は非常勤は時給5000~に設定している。

さらに良い人材なら交通費は全額負担するべきだ。いい人材に関しては高速代・ガソリン代全額支給している。

③2024年ベースアップ評価料の算定

かならずやるべきだ

現在導入している歯科医院は3割ほどであり差別化するには好都合である。事務作業がかなり複雑であるが、物価高に対応してより働きやすい歯科医院をつくるために導入しよう。

そして導入後はインスタなどでその情報を発信して、他院との差別化を図るのがいいだろう。

若いスタッフはかなりインスタを見て医院の雰囲気を確認している。

④スタッフ人数

全ての職種において必要人数の最低+1を出勤させておいたほうがいい。

当院はDrも一部はアポを入れずに出勤してもらっている。

女性は体調不良・子どもの熱などがあり、そういう時に休みやすい環境を整えるべきだ。

たまに休む理由を聞いたりする院長もいるが、そんなことはしてはいけない。

休みたいときにやすめばいい。

休む時にいちいちグループラインに連絡をして、スタッフみんなでレスポンスをしている医院もあるが、意味がないからやめたほうがいい。

スタッフが休む事の理由はなんだっていい。失恋や飼い犬が死んだなどの理由で休んでもいい(当然だが体調が悪いと他のスタッフには伝えてほしいが)。

何人かが休んでも診療できる体制にしておくのが、院長の責任なのだ。

⑤スタッフを注意するべきか?

開業すぐや人数のすくないうちは院長が注意をしたほうがいい。

しかし10人を超えてくると院長一人では管理できなくなる。たまに10人以上の組織で院長が管理できている気になっているが人もいるが、不可能だ。どんなに優秀な人間でも管理できるのは5~8人で、10人以上の管理はできない。

10人を超える組織は注意もスタッフに任せる。

注意をする時は「時・場面」をしっかり意識する。

本人が体調の悪そうな時や忙しそうなときに注意はしてはいけない。体調と時間にゆとりのある場面までしっかりまって注意をする事を心がけよう。

スタッフの行動に突発的に怒ってしまい、別の理由があったなんていう経験のある院長も多いだろう。

注意するときは何日か寝かせてからのほうがいい

私の場合スタッフが20人を超えても全員と面談をしていたし、スタッフ同士の不満を解決する事が院長の仕事だと思っていたがそれは間違いだった。

スタッフの人間関係に院長が入りすぎると、スタッフは自分で解決する思考が停止する。

面談で院長に言えばなんとかしてくれるという思考になってしまう。

さらに解決できなかった時に「院長が解決してくれない」という不満にもつながる

私は今面談はやっていない。幹部スタッフは月1回ミーティングをしているが、私は必要な時に幹部スタッフには話すが定期的に話す場をあえて設けていない。そうする事でスタッフ自らが考え解決策をだす組織になる。

本当にヤバい事態には自然と報告がされる。

10人を超えた組織の人間関係トラブルを0にすることが無理なので、あきらめよう。

ゆったりと思考する癖をつける

いかがだっただろうか?

おそらく開業前の院長は「こんな事簡単だ」と思ったかもしれないが、やってみると意外と難しい。

〇億円セミナー、自費率〇%を目指せ!

などという安易なキャッチコピーに踊らされずに、ゆったりと物事を考える癖をつけよう。

人は有益だと思う情報に飛びつく癖があるし、さらに院長はそれをなんとしても実行しとうとして、スタッフにイライラしたりしてしまう。

まずは本当に年商〇億必要なのか?本当に自費率〇%必要なのか?をしっかり考えれる情報に飛びつくくせを辞める。

歯科医師としても開業医としても人生は長い。

人生色々あるがあせらなくても、だいたい何とかなる。

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