今回は歯科衛生士不足について考察していく。
参考文献
・歯科衛生士人材確保、復職に関する報告書
・厚生労働省(歯科衛生士の現状と今後の検討の進め方について)
・厚生労働省(令和6年度 衛生行政報告例)
「歯科衛生士が足りない」これは歯科業界での常套句である。
歯科医師同士で集まるとやはり皆が口を揃えて「歯科衛生士が足りない」という話題がでる。
はたしてそれは事実なのか?
私の感覚では歯科衛生士は求人を出せばすぐに集まるし、そもそもスタッフからの紹介で入社する歯科衛生士が多く、求人に困ったという認識はあまりない。
友人達の医院に関しては
「歯科衛生士が不足している」という意見もあるが、「歯科衛生士は求人をだせばある程度集まる」という対局のような意見もある。
歯科衛生士人数の現状はどうなっているのか?
今回は現状の歯科衛生士数と今後の歯科衛生士数について考察していく。
歯科衛生士数の現状
歯科衛生士数はどのような状況なのだろうか?
働いている歯科衛生士数:14,9579人
資格を有している歯科衛生士数:32,1241人
現場で働いているのは有資格者のうちの46%で、半数以上が資格があっても働いていないという状況。
これは歯科衛生士の多くが女性という事に起因するだろう。
さらに今までの歯科業界は
「体調不良でも休めない」
「院長からのパワハラ」
「有給が使えない」
というような事も多く、過去に勤務した歯科医院で何らかのトラブルがあり歯科衛生士に復帰していない人もかなりの人数存在する事が考えられる。
「歯科医院は女性が働く環境が整備されていない」という歯科衛生士側の意見も耳にする。
では就労している歯科衛生士数はどのように推移しているのだろうか?

就業歯科衛生士数は年々大幅に増加しており、その数は1年で約1000人にものぼる。
これは日本という国が経済低迷しており共働きが増えた事や、女性にも働きやすい歯科医院が増えた事が理由になっていると考えられる。
働く歯科衛生士人数は着実に増えてきている。
歯科衛生士の年齢
歯科医師は高齢化がかなり深刻であり、私が開業している地域でも30代40代の歯科医師は少なく、50代以上の歯科医師が多くを占めている。
では歯科衛生士の年齢分布はどうか?

歯科衛生士は全世代が満遍なく存在しており、歯科医師のような高齢化は見られない。
歯科医師と違い60歳を超え働く歯科衛生士は減るが、50代まで就労歯科衛生士は均一である。
就業している歯科衛生士の人数はどうか?

結婚、出産で30代前半で一時的に就職率は下がるが、30代後半以降は就職する歯科衛生士は増加する。
さらに過去と比較してもどの世代でも就職している歯科衛生士は大幅に増加している。
歯科衛生士の勤務先
歯科衛生士の勤務に関する情報をまとめよう。
・転職経験の状況

令和においては常勤で約30%、非常勤で約7%が勤務先を変わった事はないが平成ではより多くの歯科衛生士が一つの歯科医院に勤務していた事がわかる。
最近は様々な歯科医院情報を得る機会があり、昔よりは転職しやすい傾向はあるものの、それでも30%の歯科衛生士は転職の経験がない事が分かる
・転職理由
では歯科衛生士が転職する理由は何か?

歯科衛生士が転職する理由は「結婚出産や経営者との人間関係」が大部分を占めている事が分かる。
当院の歯科衛生士の給料は周りの歯科医院よりは高めに設定してあるが、愛知県内で最も高い水準ではない。
それでも当院に歯科衛生士が集まり離職が少ないのは、福利厚生や働きやすさに投資をしていたり、私は怒る事はないので、院長である私との関係が良好(私は良好だと思っている)だからかもしれない。
地域の平均以上の給料に設定する事は大切だが、それ以上に福利厚生や院長の性格が重要という事が分かる。
歯科衛生士の離職を防ぎたい院長は、給料を平均より高めに設定し福利厚生を整え、アンガーマネジメントをするといいだろう。
・再就職の障害

再就職の障害になっているのは20~40代では「勤務時間」で、50代以降は「スキル」という結果になった。
歯科医院側が「歯科衛生士自身が希望する勤務時間を提供する事」も歯科衛生士確保には有効だ。
・診療所あたりの歯科衛生士数

一つの歯科診療所あたりの歯科衛生士数(常勤換算)は2.0人となっており、10年前と比べ倍に増えている。
歯科衛生士が増え歯科医院数が減少しているため、この流れは今後も続く事が予想できる。
さらに歯科衛生士は新しく綺麗な医院に集まりやすい上に、新規開業の歯科医院は大幅に減少しており、今後新規開業する歯科医院の歯科衛生士確保は容易になっていくだろう。(建築費の高騰問題はあるが…)
歯科衛生士学生
次は、歯科衛生士学生に焦点を当ててみよう。
定員割れの歯科衛生士養成施設が多いという記事があるが、それは真実なのか?
・歯科衛生士の入学者数推移

歯科衛生士の専門学校は定員割れが多いとというのは事実である事が分かる。
しかし「歯科衛生士専門学校の定員割れ=歯科衛生士数が減っている」
という構図には少し誤りがある。
正確に表現をすると
「歯科衛生士養成施設が大幅に増加したため、定員に追い付いていない」という表現が正しい。
その証拠として入学者数は年々増えている。
・歯科衛生士の求人倍率
2026年現在の新卒歯科衛生士の求人倍率は23倍と言われている。
これは新卒歯科衛生士1人に対して23の歯科医院が求人を出しているという状況である。
この数字を見ると歯科衛生士側からすると
「歯科医院を選び放題だ!」
歯科医院側からすると
「新卒歯科衛生士の採用はかなり難しい」
という感覚になるかもしれない。
しかし歯科医院側の状況も考慮する必要がある。
歯科医院側の状況とはどういう事なのか?
・歯科医院に勤務する常勤歯科衛生士の割合


常勤歯科衛生士が0、1人の歯科医院が63%も存在する。
新卒歯科衛生士が0、1人しか歯科衛生士がいない歯科医院を希望するだろうか?。
当然、新卒歯科衛生士であれば当然指導をしてもらる環境を選ぶだろう。
そのため、実際は残りの37%の歯科医院に歯科衛生士求人が集中する可能性が高く、23倍と言ってもそこまで歯科医院を選ぶ事は難しく、歯科衛生士が就職したいという歯科医院には求人が集まる事が予想できる。
【今後歯科衛生士確保が比較的容易になる理由】
・歯科衛生士人数は増加している
・以前より高齢な歯科衛生士も働くようになっている
・歯科医院が減少(毎年約900件の歯科医院が減少している)
・歯科医師数が減少(Dr1人で雇用できる歯科衛生士数には上限がある)
・歯科医院の新規開業が減っているため、新しい医院には歯科衛生士は集まりやすい。
まとめ
今回は歯科衛生士不足問題について考察した。
現状は歯科衛生士は不足しているという認識の歯科医院が多いが、今後は緩和されていくという事が予測できる。
しかし「人とお金は集まるところに集まる」という言葉があるように、歯科衛生士も歯科衛生士がいるところに集まりやすいと考えられる。
新規開業の歯科医師はオープニングスタッフで歯科衛生士を多めに雇用した方がいいし、継承予定の歯科医師も親の歯科医院の衛生士が多ければ今後も求人に有利に働くだろう。
反対に新規開業でも歯科衛生士を集められなかったり、継承予定の歯科医院の歯科衛生士が少ない場合は、求人は困難なため色々な対策を講じる必要がある。
歯科衛生士を集めたい歯科医院が重要視するべき事は、給料以上に福利厚生や女性によりそった働きやすさであり、そこは院長のキャラクターの影響も大きいため、アンガーマネジメントなどは歯科衛生士定着には有効だと思われる。
歯科衛生士側からすると歯科医院の福利厚生の充実により、女性にとってかなり働きやすい職業になってきている。
しかし歯科医院数が急激に減少している現在、福利厚生が充実している歯科医院には多くの歯科衛生士が集まるため歯科衛生士サイドもしっかりと就活をしないと希望の就職先に就職できない可能性も高くなってきている。
